18回多摩心臓外科学会

 

一般演題抄録集

 

 

 

 

 

会期 : 2020212日(土)

 

会場 : オンライン開催

 

 

 

 

 

 

 

会長 下川 智樹

 

榊原記念病院 心臓血管外科 成人 主任部長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

共催:多摩心臓外科学会

 

一般社団法人日本血液製剤機構

 

泉工医科工業株式会社

 

テルモ株式会社

 

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社

 

 

 

 

 

Session(13:3013:55)

 

座長 赤坂 純逸 (東京医科大学八王子医療センター 心臓血管外科 教授)

 

1-1.原発性肺動脈平滑筋肉腫の1

 

   独立行政法人国立病院機構 災害医療センター 心臓血管外科

 

   〇髙橋 雄、新野 哲也

 

 

 

1-2.卵円孔開存によるPlatypnea-orthodeoxia syndromeに対して外科的閉鎖術が奏功した症例の検討

 

武蔵野赤十字病院心臓血管外科

 

〇横山賢司、田﨑大、吉﨑智也

 

 

 

Session 2(13:5514:30)

 

座長 新野 哲也 (国立病院機構災害医療センター 心臓血管外科 医長)

 

2-1.2度のDVR術後に生じた僧帽弁位PVLに対しManouguian法によるre-DVRを施行した一例

 

榊原記念病院  心臓血管外科

 

〇御子柴 晴樹、在國寺 健太、下川 智樹

 

 

 

2-2.馬蹄腎を伴った腸骨動脈瘤に対しEVARを施行した1

 

東京医科大学八王子医療センター 心臓血管外科 

 

〇木村 光裕、芳賀 真、西山 綾子、本橋 慎也、井上 秀範、赤坂 純逸

 

 

 

2-3.A型急性大動脈解離に対するopen stent graft偽腔留置により腹部malperfusionを発症した1例

 

    杏林大学心臓血管外科

 

  〇稲葉 雄亮、古暮 洸太、峯岸 祥人、遠藤 英仁、窪田 博

 

 

 

Session 3(14:3014:55)

 

座長 八丸 剛 (町田市民病院 心臓血管外科 部長)

 

3-1. Homograft置換20年後にAVRを施行した1

 

    青梅市立総合病院

 

       〇黒木秀仁、櫻井啓暢、白井俊純、染谷毅

 

 

 

3-2: Amplatzer Septal Occluder留置4年後に感染性心内膜炎を発症した1例

 

    東京都立小児総合医療センター 心臓血管外科

 

       〇原田大暉,山下健太郎,山本裕介,野間美緒,吉村幸浩

 

 

 

1-1.原発性肺動脈平滑筋肉腫の1

 

   独立行政法人国立病院機構 災害医療センター 心臓血管外科

 

   〇髙橋 雄, 新野 哲也

 

 

 

症例は78, 女性. 20201110, 数日前からの呼吸苦を主訴に救急外来を受診.

 

血圧;90/50mmHg, 心拍数; 100 bpm. (), 呼吸数; 30/min.pre-shockであった. 経胸壁心臓超音波で右心負荷, 肺高血圧を, CTで主肺動脈から肺動脈分岐部に至る造影欠損影を認め, 急性肺動脈血栓塞栓症の診断で緊急手術とした. 胸骨正中切開, 人工心肺確立後, 主肺動脈を切開すると肺動脈弁交連部直上から主肺動脈をほぼ占拠し, 肺動脈分岐部に至る腫瘍性病変を認めた. 硬い充実性腫瘍であり肺動脈壁へ広範囲に浸潤し, 完全切除は困難と判断し, 完全閉塞による突然死を回避すべく可及的に腫瘍を摘除した. 病理所見は平滑筋肉腫であり,他臓器に原発巣は認めなかった. 有害事象無く自宅療養が可能となった為, 肺動脈再建・肺切除を含めた追加手術や化学療法を勧めたが, 追加治療のご希望なく外来での経過観察となった. 20215月初旬, 呼吸苦を主訴に入院し, 同年517, 永眠された. 原発性肺動脈肉腫は, 肺動脈から発生する稀な間葉系腫瘍であり, 極めて予後不良な疾患である. 今回我々は原発性肺動脈平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する

 

 

 

1-2.卵円孔開存によるPlatypnea-orthodeoxia syndromeに対して外科的閉鎖術が奏功した症例の検討

 

武蔵野赤十字病院 心臓血管外科

 

〇横山賢司,田﨑大,吉﨑智也

 

 

 

Platypnea-orthodeoxia syndrome (POS)は起立時低酸素血症を呈する扁平呼吸の病態を有する。

 

その機序は起立時に増大する心房内右左短絡等が挙げられる。卵円孔開存(PFO)によるPOSに外科的閉鎖術が奏功した2例を経験したので報告する。

 

症例174歳,女性。多発胸腰椎圧迫骨折でADL低下後に起立時低酸素血症を認めた。経食道心エコー(TEE)で頭位挙上・腹圧亢進時に増加する右左短絡を有するPFOを認めた。手術では右房切開すると心房中隔瘤を認め、左房側へ径10mm大の欠損孔で交通していた。この中隔瘤が一方向弁として機能していたと考えられた。PFO閉鎖し23PODに自宅退院した。

 

症例2は74歳、男性。急性脳梗塞で入院後、離床開始時に起立時低酸素血症を認め、TEEで症例1と同様の所見を認めた。右房切開でアプローチ、症例1と同様の所見でPFOを閉鎖し12PODに自宅退院した。

 

 

 

 

 

 

 

2-1.2度のDVR術後に生じた僧帽弁位PVLに対しManouguian法によるre-DVRを施行した一例

 

榊原記念病院  心臓血管外科

 

〇御子柴 晴樹、在國寺 健太、下川 智樹

 

 

 

症例は54歳男性。1993年にIEに対してDVR2000年にPVL, PHに対し

 

re-DVR(CM21mm+CM25mm)+TAP施行後。Re-DVR直後からM弁位のPVLを少量認めており、2019年にRVSP80mmHgへとPHが進行したがPVLは増強なく手術リスクも高いため外来フォロー継続となった。しかし呼吸苦症状が増悪し外出困難となり、心不全入院中の精査でPVL増強、Ao-LAシャントを指摘され当院紹介となった。シャント閉鎖及び十分なサイズの弁置換を行う目的でManouguian法を用いたre-DVRSJM Regent 21mmSJM Expanded cuff 27mm)を施行した。M弁は術者から見て1-5, 10-12時にPVLを認めた。M弁輪周囲は石灰化が著明であり牛心膜パッチによる全周弁輪形成(折り返し法)を行った。術後経過は良好で、心エコーでPVLなくRVSP82mmHgから53mmHgまで改善した。呼吸症状も改善し良好な結果を得たため、文献的考察を加え報告する。

 

 

 

2-2.馬蹄腎を伴った腸骨動脈瘤に対しEVARを施行した1

 

東京医科大学八王子医療センター 心臓血管外科 

 

〇木村 光裕、芳賀 真、西山 綾子、本橋 慎也、井上 秀範、赤坂 純逸

 

 

 

異所性腎動脈を伴った馬蹄腎に合併した腹部大動脈瘤は、異所性腎動脈温存を検討した場合、ステントグラフトの適応になる症例は少ない。今回我々は、ステントグラフトを施行し、異所性腎動脈の温存が可能であった症例を経験したので報告する。症例は72歳男性、大動脈分岐部から右総腸骨動脈にかけて34×38㎜大の動脈瘤を認め当院紹介となった。通常位置の腎動脈の他にIMA分岐部の近傍に2本の異所性腎動脈を認め、ステントグラフトの通常展開では閉塞してしまう位置であった。検討の結果ステントグラフト(Gore🄬Excluder🄬)を選択し、メインボディーの展開時に全体を引き下ろし、大動脈分岐部へSit onさせることで異所性腎動脈の温存が可能であった。

 

 

 

 

2-3.A型急性大動脈解離に対するopen stent graft偽腔留置により腹部malperfusionを発症した1例

 

   杏林大学心臓血管外科

 

 〇稲葉 雄亮 古暮 洸太 峯岸 祥人 遠藤 英仁 窪田 博

 

 

 

症例は57歳男性。大動脈遠位弓部にinitial entry、かつ、下行・腹部大動脈に肋間および腰椎動脈によるmultiple reentryを有したA型大動脈解離と診断。腹部分枝は真腔分岐。緊急でopen stent graftOSFrozenix 27×120mm)を併施した、全弓部置換術を施行。左総頸と左鎖骨下動脈間で離断し真腔確認後にOSを留置した。人工心肺離脱後より左下肢動脈圧消失を認め、左腸骨動脈malperfusionと判断しfemoro - femoral crossover bypassを追加した。ICU帰室後、尿量の減少、Lactate値の上昇、および、肝機能障害出現。緊急造影CTにて、OS末梢側の偽腔留置、胸部から腹部の真腔閉塞を認めた。FF bypass、および、腹部reentryを介し遅延ではあるが、腹部臓器造影効果を認めた。腹部臓器の左開胸アプローチによる下行置換、および、腹部大動fenestrationを検討も、全身状態不良、かつ、確実性からTEVARによる真腔へのreroutingを選択。右大腿アプローチ。OUTBACK®︎Cordis)を用いてFlapを貫通し虚脱した真腔から偽腔へwireを通過。同部位にBalloonを用いてflapfenestrationを作成し、CTAGopen stent graftから真腔へ留置した。小開腹にて壊死腸管がないことを確認。術後肝腎不全を合併したが肝不全は血漿交換を要するも正常値まで改善。腎機能は改善せずHDを施行している。現在、一般病棟にてリハビリ加療中である。OS 留置のpitfall、および、偽腔留置に対する追加治療について文献的考察を加えて報告する。

 

 

 

3-1. Homograft置換20年後にAVRを施行した1

 

    青梅市立総合病院

 

       〇黒木秀仁、櫻井啓暢、白井俊純、染谷毅

 

 

 

78歳、男性。57歳時にAVRを施行後9カ月でPVEを発症し、Homograftを用いた大動脈基部置換術を施行。

背部痛を主訴に来院し、化膿性脊椎炎の診断で入院。血液培養からStreptococcus が検出されPVEと診断され、塞栓症状、心不全がなかったため抗生剤治療を先行させたが、経過中にARの増悪を来したため、第33病日に手術を施行した。Homograftはバルサルバ洞が高度に石灰化していたが、弁輪への感染の波及は認めなかった。各弁尖は非常に脆弱で、右冠尖の先端に白色疣贅が付着しており、治癒過程の所見であったため、Homograft内でAVRを施行し、硬化したHomograftの閉鎖にはウシ心膜パッチを使用した。感染再燃なく、術後37日目にリハビリ目的に転院した。

 

Homograft置換後の遠隔期成績について、文献的考察とともに報告する。

 

 

 

 

 

3-2: Amplatzer Septal Occluder留置4年後に感染性心内膜炎を発症した1例

 

    東京都立小児総合医療センター 心臓血管外科

 

       〇原田大暉,山下健太郎,山本裕介,野間美緒,吉村幸浩

 

 

 

 患者は9歳の女児.5歳時に当院循環器科で2次口欠損型の心房中隔欠損(ASD)に対しAmplatzer Septal OccluderASO)留置が行われ,以後経過観察中であった.発熱と頭痛,辻褄の合わない会話や歩行困難等の症状が出現し当院紹介入院.頭部CTで脳出血や脳浮腫は認めず,血液培養からMSSAが検出されたが,経胸壁心エコーでは感染性心内膜炎を示唆する所見は認めなかった.第3病日に全身麻酔下に経食道心エコーを施行したところASOデバイスの左房側に10mm大の可動性のある疣贅を認め,ASOデバイスの感染性心内膜炎と確定した.その後の頭部MRIで左前大脳動脈領域の梗塞巣が明らかとなったが,脳出血や感染性脳動脈瘤等は認めず,同日緊急手術を施行した.体外循環心停止下にASOデバイスおよび疣贅を一塊として摘除,心房中隔欠損部を新鮮自己心膜でパッチ閉鎖した.術後新たな脳病変の出現や神経学的症状の悪化等は認めず抗菌薬投与を6週間継続した.